装具から卒業するには。その2 共同運動からの脱出編

鬼PTのリハビリコラム

※装具卒業を奨励しているわけではありません。

 担当PTが必要と判断されている場合、自己判断で装具を外すべきではありません。

 装具や杖は、メガネのようなものです。

 視力が悪くなれば、メガネをかけるように、足の機能がわるくなれば、装具や杖がひつようになるのは、必然です。

 どうしても、装具から卒業したいという方は、いくつかクリアしなければならない課題があります。

伸展共同運動パターンからの脱出

 今回、ご紹介するのは、伸展共同運動パターンからの脱出編です。

 一般的に片麻痺の方の下肢は、伸展共同運動パターンに支配されます。

 ある程度、分離運動がすすみ、腹這いでの膝関節屈曲ができたら、

 次に行うのが 仰向けで、足関節を背屈位で保持したままの膝関節の屈伸です。

自主トレ方法( 足関節を背屈位で保持したままの膝関節の屈伸 )

 特に、膝関節を伸展させる際、伸展共同運動パターンが出現し、足関節が底屈しようとしてしまいがちです。それに負けないよう、背屈位で保持できるよう頑張ってください。

 病院で、お尻上げの指導を受ける方もいらっしゃると思います。

自主トレ方法(お尻上げ:ブリッジング)

 このお尻上げも、足関節を背屈位で保持して行ってみてください。

 この運動も共同運動パターンからの脱出に役立ちます。

 お尻上げも色々工夫ができます。

 足を肩幅より少しだけ広げ、膝を内側に絞って、かつ足首を背屈位に保持してお尻上げしてみてください。

 中殿筋、長短腓骨筋に効きやすくなります。

 このお尻上げができる方は、まず、装具はいりません。

なぜ、背屈を保持したままでの、股関節、膝関節の伸展ができるようにならないといけないのか。

 前述の、反張膝や膝関節の不安定性に、足関節が果たさないといけない機能があるからです。

ロッカーファンクション : ヒールロッカー

 それが、

 ロッカーファンクション

 歩行時の足部は、このロッキングチェアの足元のような動きをします。

 装具を卒業するためには、このロッカーファンクションが機能しなければなりません。

 ロッカーファンクションは3つあるのですが、その中の一つに着目します。

 それが、「ヒールロッカー」です。

 歩く際、麻痺側下肢を前方にスイングして、はじめに踵から地面につける必要があります。

 この踵がついたとき、膝関節は伸展しています。つまり、伸展共同運動パターンが優位になるポジションになっているわけです。

 ここで、足関節を背屈させる筋肉が、遠心性の収縮をつづけ、足関節軽度背屈位を保つことで、ヒールロッカーが機能します。

 しかし、装具が卒業できない片麻痺の方の多くが、踵接地と同時に、足関節背屈位が解けてしまい、ヒールロッカーが機能せず、進行方向と反対側へブレーキをかけるベクトルが発生してしまい、反張膝を引き起こします。

 そうならないために、股関節、膝関節を伸展しても、背屈位を保持できる必要がある訳です。

 逆に言えば、これができれば、装具卒業が見えてきます

 短い距離は、大丈夫だけど、長い距離を歩くと反張膝が出る人もいます。

 その場合は、持久力の問題のことが多いので、上記の自主トレの量をこなす必要があります。

 かなり、難易度高めの自主トレーニングです。

 頑張りすぎると、上肢の異常筋緊張が高まる可能性があります。

運動後の筋緊張の観察とケアを忘れないようにしてください。

 

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投稿者
鬼PT

周囲のスタッフやかつての部下達からは「鬼」と言われる、機能回復にこだわっている理学療法士です。
リハビリ特化型デイサービス「リハビリデイサービス希望」代表
資格:理学療法士、介護支援専門員、
介護予防推進リーダー、地域包括ケア推進リーダー取得しており、市の地域ケア会議に助言者として活躍中

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